コストコモデルでアマゾンに真っ向勝負をしかけたJet.com
2015年7月にAmazon.comに対抗して立ち上げられたECサイトの『Jet.com』。サービス開始前から「どこよりも安く売るです!」とぶち上げ、大巨人アマゾン相手に価格勝負でどこまで太刀打ちできるのか、アメリカだけでなく日本でも注目されてました。
Jet.com創業者のマーク・ロア氏は、以前「Diapers.com」というベビー用品を扱うECサイトの社長でした。会社を急成長させたロア氏でしたがアマゾンが同じ商品分野に進出してきて熾烈な価格戦争に突入。赤字に追い込まれ、最終的にアマゾンに買収されてしまったんです。
ロア氏はアマゾンで2年ほど働いた後、2012年に退職。その後、資金調達して再度因縁のアマゾンに勝負をしかけるなど、外野が面白がる裏話もあり、注目度合に拍車がかかった感じです。
Jet.comを知らない人に説明しますと、立上げ時のJet.comのビジネルモデルは、年会費49.99ドルの会員制。1時間以内の配達や即日配達といった利便性よりも、価格を重視するミドルクラスをターゲットにしてました。
サービス開始後三ヶ月であえなくビジネルモデルを変更
「どこよりも安く売るです!」と鼻息フガフガと荒く、コストコ式ビジネスモデルを引っ提げてアマゾンと真っ向勝負を挑んだJet.comでしたが・・・、サービス開始後三ヶ月であっと言う間に会員制を止めちゃいました。はやっ。
会員制をやめた理由については明らかになっていませんが、会員制があることで思うようにシェアを拡大出来ないという結論になったからでしょう。それにしても決断はやっ。
アメリカのEC化率は約7%。イノベーター理論でいうイノベーターの割合は2.5%です。この割合からいうと、ECのイノベーターやヘビーユーザーは既にアマゾンプライムの会員になっていて、Jet.comを利用するのに更に$50払うほどの余裕はないのではないかと思ってました。しかし、あっと言う間のビジネスモデル変更でした。これほど素早く修正の意思決定をして、やってのけてしまうのはある意味すごいことですよ。
アマゾンの秘孔を突いた お前はもう死んでいる
Jet.comがキャッシュを急激に食いつぶしてる。なんて周囲の心配をよそに、会員制を廃止した翌月にはどどーんと412億円の調達に成功。ロアさんたら、やり手だわー。
で、その調達したお金で家庭用品専門のEC企業Hayneedleを買収しました。家庭用品はサイズが大きくてかさばるので、配送の負担が大きく、実はアマゾンが取り扱っていない商材なのです。アマゾンの秘孔をズバっと突くニッチ商品を強化したのです。
実は、Jet.comのカスタマーサービスのレベルは超高い(ただしアメリカは全体的にレベル低め)
「どこよりも安く売ったる!」とアマゾンと真っ向勝負に出たかと思ったら、「儲からんし、やめたわー」とあっという間にビジネスモデルを変更し、アマゾンが手を出しにくいニッチ商品にささっと参入。
なんていうか、このヒットアンドアウェイ感とか、変幻自在っぷりがステキな感じで、陰ながらJet.comを応援しているボクですが、残念ながらJet.comで商品を買っても日本には届けてくれないようです。
なので、Jet.comのカスタマーサービスの質を知る術はないのですが、実は一般的なアメリカのそれと比較するとものすごく優秀だとか。
お客様天国の日本に住んでいる我々からしてみると信じられないのですが、アメリカのカスタマーサービスは、顧客にサービスをしているのか、ケンカを売ってるのか分からないレベルのところが多くあります。
でも、そんな中でも時々、「ザッポスの奇跡」で知られるECサイトの靴屋のザッポスみたいなお客様第一主義的な企業もあったりします。調べてみるとJet.comのカスタマーサービスの評判は、ザッポスと同じように上々なのです。
最近は、アマゾンがあまりにも巨大になりすぎちゃって対抗馬がいなくなりましたが、今後も、Jet.comの変幻自在な動きに注目していきたいと思います。