成熟市場のようで変化の兆しが見られるギフト市場
わたくしその昔、とある食品メーカーに勤めていたことがありまして、そこで百貨店担当の営業をやってました。
今はどうなっているのか定かではありませんが、当時は、お中元とかお歳暮シーズンになると百貨店のギフト陳列というのがありまして、お中元・お歳暮のギフトコーナーが設置される頃になると、食品問屋とか、メーカーの営業マンがぞろぞろと集まって、什器を組み立ててギフト商品を展示し、売り場づくりのお手伝いするのです。
もちろん、事前にバイヤーと商談して、どの商品を取り扱ってもらえるか決まっているのですが、実際に商品が展示されるかどうか決まるのは、ほとんど現場合わせなのです。事前商談で取扱が決まったからと言って安心してホゲーっとしていると、現場ではスペースがないのではじかれてしまい、その結果、ギフト売り場に商品は展示されず全く売れなかったなんてことが起こります。
売れ残った商品はどうなるかと言うと、ギフトシーズンが終わると百貨店の物流センターからどっさり返って来ます。
メーカー営業マンにしてみれば、「一回仕入れたもん返品するなよ。」と言いたくなりますが、百貨店の仕入れの裏側はかなり適当(当時はですよ。当時は。今のことは知りません・・・笑)ですから、在庫管理なんて全くできてません。まぁ、そもそも凄い数の商品を短期間で売るので管理しきれないと言うのが実情なんでしょうが、欠品しないようにどっさり仕入れてあとで返しちゃうのがごく普通に起こってました。
百貨店の現場がこんな感じなので、メーカー側の在庫管理はなかなか大変です。返品問題もさることながら、いきなりとんでもない数の発注がきたりします。どこかの法人が一気に注文してきた時に起こるのですが、そうなると他にもそんな需要にありついた営業マンとの間で商品の取り合いになったりします。
ギフト商品を期日内に福岡に届ける為に羽田空港に直接行き、無理やり頼み込んで出発直前の貨物に乗せたのはいい思い出。他で使う予定だった、送っちゃいけない商品も間違えて一緒に乗せちゃいましたけどね。気が付いた時は商品は空の上。あのときはどーもすいませんでした。
さてさて、そんな昔とは今や状況が変わり、ギフト市場も随分と様変わりしている様子。
最近のギフト市場のデータを探してみると矢野経済研究所の調査結果が見つかりました。
ギフト市場に関する調査結果 2015
https://www.yano.co.jp/press/press.php/001461
以下抜粋すると・・・
◆ 2014年の国内ギフト市場規模は前年比100.6%の9兆7,400億円のプラス成長
2014年の国内ギフト市場規模は小売金額ベースで前年比100.6%の9兆7,400億円であった。古くから受け継がれた贈答文化は時代の流れとともに変化してきているものの、「ギフト」を贈るというコミュニケーション手段は、現代社会に即した形で受け継がれている。◆ 儀礼的贈答からカジュアルなギフト需要へ
日本には古来より慣習としきたりに則った贈答文化があるが、少子高齢化、核家族化、地域関係や親戚関係の希薄化などにより、こうした儀礼的な贈答は減少している。一方で、身近な存在である親、子供、友人等に対する感謝や好意、尊敬や愛情の表現として「ギフト」は大きな役割を持っており、こうしたカジュアルなギフト需要が台頭してきている。◆ ギフトアイテムやチャネルの多様化により、贈答機会がより身近に、より曖昧に
冠婚葬祭全てに対応し、且つ年代や性別も問わないカタログギフトの進化やソーシャルギフト※の急成長、「自分へのギフト」としてのご褒美需要の増加など、ギフトを取り巻く環境は用途や目的、品目(ギフトアイテム)、贈答方法(チャネル)のすべてにおいて多様化、複雑化してきている。贈られた人が喜ぶものであればすべてがギフトになる今、小売企業各社も敢えて用途や目的を曖昧にした販促活動を行うことで、消費者需要を喚起している。
つまり、市場自体はほぼ横ばいで現状維持。ただ、市場は成長はしていないがその中身は変化していて、新たなギフトシーンとか、新たなチャネルが生まれているということ。
ソーシャルギフト市場は予想通り急拡大する?
様変わりするギフト需要の中、近年注目されているのがソーシャルギフト市場です。またもや矢野経済研究所がソーシャルギフト市場について調査してるので、以下に引用。しかし、矢野経はなんでもやってるな。
ソーシャルギフト市場に関する調査結果 2015
https://www.yano.co.jp/press/press.php/001418
◆2014年度のソーシャルギフト市場は、前年度比182.2%の82億円と推計
2014年度の国内のソーシャルギフト市場は、前年度比182.2%の82億円(発行金額ベース)となった。法人のインターネットを利用した販促キャンペーン(オンラインキャンペーン)におけるソーシャルギフト需要が大きく成長したほか、個人から個人に贈るスモールギフトの進展により、市場は拡大した。◆サービス参入企業の増加により、ソーシャルギフトサービスが伸張
2014年に入り、ソーシャルギフトサービスへ新規参入する企業が相次いでいる。特に韓国系の企業が、自国で成功したビジネスモデルを、日本でサービス展開する取組みが活発化したことで、ソーシャルギフトの認知度が上がりつつあり、徐々に浸透している。
また、ソーシャルギフトサービスでは、個人から個人へ「ありがとう」、「ごめんね」という気持ちを気軽に伝えることができる点が魅力となり、スモールギフトを贈るケースが拡大している。◆市場予測:2020年度のソーシャルギフト市場は1,110億円まで成長すると予測
国内のソーシャルギフト市場は、2020年度には1,110億円(発行金額ベース)まで拡大すると予測する。
法人での利用では、法人のインターネットを利用した販促キャンペーン(オンラインキャンペーン)や従業員向けの福利厚生の一環によるソーシャルギフト利用が引き続き拡大していく。オンラインキャンペーンは、金券の管理・配送などのオペレーションや配送コストが不要になるメリットから、今後も増加していくと考える。また、個人から個人へのスモールギフトとしてのソーシャルギフトサービスの浸透に加え、商品券・ギフト券、ギフト需要からの代替利用が徐々に拡大していくことが追い風になる。ソーシャルギフトサービスは、今後、従来の商品券・ギフト券や品物現物を伴うギフトなどの一部を取り込みながら拡大し、それらのギフトと棲み分けを進めながら、新しいギフトの形として浸透していくと予測する。
矢野経の市場予測によると、2014年のソーシャルギフト市場規模は82億円。国内ギフト市場規模が9兆7,400億円なので、全体からみればまだまだ比較にならない位小さな市場ですが、2020年には1,110億円に拡大するということ。いやこれ強気ですね。82億円にただ掛け算を繰り返しただけだと思いますけど、この予想は当たるのでしょうか。
というのも強気の予想がある一方でこんなこともありました。
ソーシャルギフトサービスの「ギフトネットコム」ですが、2014年12月に開始され2015年4月にギフトコードの販売を終了してます。なんと五ヶ月間ソーシャルギフトを販売しただけでサービスを閉じることになりました。経営判断で難しいのは参入よりも、撤退だと言われますが、この決断の早さには恐れ入ります。
ギフトネットコムの運営会社であったアスカネットの有価証券報告書によれば、この期間のギフトネットコード発行金額は1097万円、粗利益は114万円だそうです。広告費やシステム費用がかさんで結局、8492万円の損失・・・。コンセプトは評価されたけど利用されず、利益を出せるのは相当先になると判断しての撤退です。
他にもソーシャルギフトサービスから撤退した話はたくさんあって、2012年にNAVERまとめに掲載された6つのソーシャルギフトサービスのうち、現在も稼働しているのは、なんと1つだけ(涙)
【国内】ソーシャルギフトサービスまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2132987011985213701
今、ギフトネットコムにアクセスするとこんな表示が出てます・・・。
http://giftnet.com/
ね・・・。結構厳しい現実があるんです。
矢野経の予想当たりますかね・・・。
ソーシャルギフトサービスを使ってみて思う事
NAVERまとめで紹介されていた6つのサービスの中で唯一残っている「ギフティ」ですが、わたくしも以前、使ったことがあります。仕事でお世話になった人にスタバのチケットを贈りました。「ほんの気持ちでーす。」みたいな軽いノリで贈ることができて良かったのですが、その後は使わず、それっきり。SNSを使ってギフトを気軽に贈れるのは手軽でとてもよいのですが、要は贈りたいものが無いんですね。
というのも、ソーシャルギフトサービスに掲載されている商品は、そのほとんどがコンビニやカフェで既に取り扱っている商品です。いつもスタバに行ってコーヒー飲んでいる人に、スタバのチケットを贈ってもそんなに喜ばないでしょ。いや、そりゃ嬉しいけど、ちょっと嬉しいくらい。だって、その人はスタバでコーヒー飲もうと思えばいつでも飲めるわけだから、いつも自分で買っているコーヒーを奢ってもらったのと同じこと。
いくらスモールギフトとはいえ、贈るからには数百円のコーヒーを奢った時よりも喜んでほしい。
もらって嬉しいもの、贈りたくなるものがそこにあるかどうか、つまりはユーザー視点に立った品揃えが出来るかどうかが重要だと思うのです。
ユーザーニーズを徹底的に知ることで成功した男性向けギフトECサイト
アメリカで急成長して注目を浴びた「男性にギフトを贈りたい女性の為のECサイト」があります。
Man Crates http://www.mancrates.com/
このデザインなんかスゴイでしょ。貨物列車のターミナルですかね?みんなこっち見てて怖いんですけど(笑)
デザインもさることながら、扱っているギフトセットがスゴイんです。思いっ切り開けにくそうな木箱に入っていたり、弾薬箱を使っていたり、もらう側の男性が喜びそうな方向に思いっ切り振り切ってます。
ハンマーでブロックを壊すと中からギフトカードが出てくるというギフトもあります。バカバカしいけどやってみたい(笑)透明のゴーグル付けて、ハンマーでガンガン叩いてみたい。中身はどうでもいいから叩いてみたい。そんな気になります。
SMASH AND GRAB GIFT CARD
http://www.mancrates.com/gift-cards/smash-and-grab
スタート時の資金は12万円で始まったこのサイト。3年後には年商12億円を達成するなど急成長を遂げているのですが、この様にユーザーニーズに合わせて振り切ったサービスを構築したことが原因でしょう。
創業者のジョナサン・ビークマンさんは、顧客ニーズを知る為に、メールだけでなく、時には顧客に電話をかけてまで、顧客とコミュニケーションを取ったそうです。これってマーケティング戦略を考える時には非常に重要なポイントです。販売数量、つまり定量的データを見ることでどの商品が売れているかは分かりますが、その裏にある気持ちやホンネは分りません。
「ユーザーニーズを知りたければ、直接インタビューしてみよう。」我々がよく提案していることです。
ソーシャルギフトサービスもチャネルの新しさのみをウリにするのではなく、スモールギフトを贈る人のニーズを徹底的に理解し、改良を加えた時、一層市場に浸透していくと考えます。