Webマーケティングの中にコンテンツマーケティングという手法があります。

数年前から流行している手法なので知っている人も多いと思いますが、あらためて簡単に説明するとコンテンツマーケティングとは、コンテンツにより集客し、段階的に購買にまで導くマーケティング手法です。

ECサイトの運営を長期的視野でみた場合、コンテンツという資産の蓄積につながるため、とても有効な施策といえます。しかし、コンテンツマーケティングを効果的に運用しているECサイトは限られているため、どのように進めればよいのか、どのように運用すれば良い結果が出るのかわかりにくい方法でもあります。

そこで今回は、具体例を通してコンテンツマーケティングの手法をご説明し、ECサイト運用者の方が実際に取り組めるように、実践方法もご紹介します。

それではいきます!

コンテンツマーケティングとは

コンテンツマーケティングとは読者にとって役に立つコンテンツを制作・発信することで、潜在顧客をサイトに集客し、ニーズを満たし、段階的に関係を深め、購入やファン化へ進めて行く手法です。その特徴は次の通り。

コンテンツマーケティングは出版社のように考えよう!

従来の広告などによるPush型マーケティングに対し、コンテンツマーケティングは顧客から愛されるPull型のマーケティング手法と呼ばれます。自社の製品を売り込むのではなく、コンテンツに興味をもった読者が自ら進んで自社製品を手に取ってくれるのです。

そのためコンテンツマーケティングでは、読者を楽しませることが必要です。「運用するときは出版社のように考えよう!」などと言われます。

コンテンツマーケティングと顧客生涯価値

インターネット広告は購入を検討している顧客に対して、短期間で集客効果が期待できます。一方、コンテンツマーケティングは広告よりも即効性は低い(効果が出るまで半年くらいかかります。)ですが、購買意欲のある顧客だけでなく、潜在顧客に対してもアプローチすることができます。

コンテンツマーケティングは、読者にとって価値のあるコンテンツを提供することで、顧客を引き寄せ、コンテンツを通して、徐々に結びつきを強め、購入意欲を育てていきます。購入を迷っている見込み客に対しては、背中を後押ししてあげることもできます。購買で終わりにするのではなく、コンテンツを通して自社のファンになってもらうことで、継続的な取引も期待できます。

コンテンツマーケティングの効果をまとめると次の通りです。集客からファン化までの幅広い購入プロセスで効果を発揮します。

  • サイトへの集客
  • 見込み客の育成
  • 購入の後押し
  • ファン化

  • 単発の購入額と集客コストを比較すれば、コンテンツマーケティングよりも広告の方が効率がいい場合もあるかもしれません。しかし、一度ファンになった顧客は継続的に購入し、利益をもたらしてくれる可能性が高いです。

    このように、取り組んでからすぐに効果は出にくいが、継続的にLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めるという考えから、コンテンツマーケティングが注目されています。

    ECサイトのコンテンツマーケティング事例10選

    それでは、具体的にどのようなコンテンツで見込み顧客を集めて、ファンを作っているのかを見ていきましょう。

    「北欧、暮らしの道具店」のライフスタイル提案

    北欧雑貨を販売する「北欧、暮らしの道具店」はまさに「出版社のように考えよう!」を実現した例です。

    サイト訪問者にとっては、ネットショップというよりもライフスタイルを提案する雑誌を見ているような感覚になります。自社製品とは関係なく、お店のコンセプトにあった北欧暮らしを紹介する記事など、ライフスタイルそのものを提案することで読者のファン化を実現しています。

    スタッフの愛用品紹介の記事では、製品を一番よく知っているスタッフが、その魅力や使い方を説明しています。読者も同じようなライフスタイルを手にしたいと思えば、リンクから商品を購入できるようになっています。

    「TableRecipe」の商品知識コンテンツ

    テーブルクロスを販売する TableRecipeでは、ライフスタイルや季節に合ったテーブルコーディネートの例を紹介しています。「初夏を感じて」「雨の日のおもてなし」などのコーディネート例をみながらユーザーは商品を選ぶことができます。

    また、「テーブルクロスのサイズの選び方」のように、商品選びに慣れていないユーザーの疑問に答えるコンテンツも用意されています。

    「ライスフォース」のソーシャルメディア活用

    化粧品ブランドのライスフォースはFacebookページを活用することで、顧客のファン化を実現し、Facebook社からベストプラクティスに選出されています。

    商品プロモーションなどの投稿は極力避け、30代から50代をターゲットに、日常的な話題やブランドイメージに合致したコンテンツを投稿し、ファン化を実現しました。その結果、商品投稿をした場合も、「いいね!」や「シェア」されることが多く、多くのSNSユーザーに拡散されています。

    「アイリスオーヤマ」のHowToコンテンツ

    家具家電を販売するアイリスオーヤマでは、読者の役に立つ情報を紹介しています。「押入れクローゼット徹底収納術」など、主婦向けの雑誌で特集が組まれそうな記事で商品を有効に活用するノウハウを知ることができます。

    「コメリ」のHowTo動画とPDF

    ホームセンターのコメリは 読者の疑問に答える動画コンテンツやPDFを公開しています。「レンガの敷き方」では、具体的な方法を動画コンテンツでわかりやすく説明しています。

    「茂木和哉公式  きれい研究所」のHowToブログ

    オリジナル洗剤などを販売するきれい研究所では、プロの視点から掃除や洗濯の知識を提供することで読者を集めています。HowToコンテンツの内容が優れていれば、その記事を書いた人が作った製品の信頼性も向上します。

    石けん百貨

    石鹸を専門に取り扱っているECサイトの石けん百科は「石鹸百貨」という読者のための情報サイトを運営しています。ユーザーは石鹸百貨で役立つ情報を手にして、石けん百貨で購入するという流れができているのです。また、石けん百貨のページではリピーター限定コンテンツを用意して、定期的に購入してくれるファンを優遇しています。

    「使える機材のセレクトショップ」の知識ブログ

    使える機材のセレクトショップのブログでは、プロカメラマンが機材や撮影方法を紹介しています。販売している機材を使いながらクオリティの高い写真を公開し、機材を紹介しています。「こんな人には自社取扱の商品がおすすめだけど、違う用途の人には別の商品を使った方が良いです」と顧客の利益を優先することで、信頼を獲得しファン化につなげています。

    「English Boot Camp」の専門知識ブログ

    English Boot Campは、英語の発音に特化した英語スクールで、学習者向けの教材も販売しています。英語の学習に役立つ質の高いブログ記事を提供することで集客につなげ、更には自社の英語教材への信頼も向上させています。

    「LIG」のオウンドメディア

    Web制作会社のLIGはオウンドメディアにまで成長し、コンテンツが大きな資産になったことで有名です。自社事業に近いWeb系コンテンツからおもしろ系のバズコンテンツまで手がけています。(ただしおもしろ系のコンテンツを成功させるには難易度がとても高いです。)

    ECサイトのコンテンツマーケティングの進め方

    ここからは、ECサイトのコンテンツマーケティングを実践するときの進め方を紹介します。

    ゴールの設定

    ECサイトですから最終的なゴールは売上や利益の増加になりますね。ただ、そこに至るまでにいくつかのゴールを設定をすることで進捗を確認しやすくなります。これをKPIと言います。

    KPIの例として以下があげられます。

  • セッション数(全体・コンテンツ別)
  • PV数(全体・コンテンツ別)
  • 直帰率(全体・コンテンツ別)
  • 平均滞在時間(全体・コンテンツ別)
  • 検索順位(コンテンツ別)
  • Twitterフォロワー数(新規・リピーター)
  • ユーザー数(新規・リピーター)
  • 購入単価(新規・リピーター)
  • CV率(新規・リピーター)
  • ターゲットの明確化

    コンテンツを届けたいターゲットを明確にします。理想的な顧客の年齢、性別、家族構成、居住地、職業、収入、趣味、性格などを細かく想定します。これをペルソナといいます。ペルソナを設定してからコンテンツを作ることで、コンテンツに書かれている内容とターゲットニーズとのミスマッチを防げます。

    コンテンツの設計・制作

    定義したペルソナにどんな行動を取らせるのかを決めます。例えば、商品を認知して欲しいのか、商品の理解を深めて欲しいのか、それともロイヤルティを高めたいのか、友人に紹介して欲しいのかなどが考えられます。

    次に、ペルソナに目的の行動を取らせるためには、どんなコンテンツが必要なのかを考察し、その後、実際の制作にはいります。

    運用管理

    コンテンツマーケティングは長期戦になるため、しっかりとした組織体制を作ることが重要です。ECサイトの規模にもよりますが、システム管理・コンテンツ制作・編集・効果測定・全体管理などWeb担当者が全て一人でやるのは無理があります。運用に必要な役割と人数、および時間を見積り、組織的に取り組みましょう。制作運用をプロに外注するのもひとつの方法です。

    効果測定

    コンテンツマーケティングは成果がでるまでにある程度時間がかかります。成果があがらない時から適切な方法で効果測定することが大切です。

    「ゴールの設定」でも触れましたが例えば、記事別の訪問者数やソーシャルページの登録者数などの中間目標(KPI)を設けることで、進捗を正しく把握し、正しい方向に進んでいけます。

    まとめ

    コンテンツマーケティングは、ユーザーは有益な情報を得ることができて、その結果ショップのファンになって継続的に利益をもたらしてくれるWin-Winなマーケティング手法です。

    ただし、効果がでるまで少し時間がかかります。取り組み始めて半年くらいは、まったく効果がないこともあるのでそこは覚悟してください。

    長期的な視点で取り組む必要がありますので、担当者は経営トップを巻き込んでおきましょう。時間はかかりますが、正しい手順で実践すれば必ず成果につながります。是非実践してみてください。