簡単に売り出せるという理由で、オリジナル商品をECサイトで通販するケースが増えています。しかし、消費者は知らない商品やブランドについて警戒心を持つ為、オリジナル商品をいきなり販売するのは結構難しいことです。そんな事もあって、インターネットを利用してオリジナル商品を売ろうとトライしているけど、なかなか売れずに苦労している企業からのご相談をよく受けます。

ここでは、弊社がコンサルティングをした、オリジナルブランドの化粧品(元々は業務用商品)をコンシューマーに販売し、新規顧客の売上金額を20倍にするまでに行った事例について説明します。マーケティング戦略構築の際にやるべきことは、業種や業態が変わっても共通の部分が多いので、化粧品・美容業界以外の業界の商品・サービスを販売する場合でも充分に参考になるはずです。

1 ECサイトでのオリジナルブランド化粧品販売の背景・課題

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高品質でプロ用として高い評価を受けている基礎化粧品ですが、B2C商材として楽天や、自社ECで消費者に販売してみたもののほとんど売れませんでした。リアル店舗で取り扱っている店は無く、消費者には全く知られていない業務用商品だったからです。そんな無名の基礎化粧品をECサイトで売れるようにすることがこのプロジェクトの課題でした。

    事例概要
    会社名 化粧品メーカーA社
    社員数 約150人
    期間 調査フェーズ3ヶ月 実施フェーズ半年
    結果 新規顧客売上:3ヶ月で5倍 → 6ヵ月で20倍

自社オリジナル化粧品をインターネットを活用して積極的に消費者に販売し、売り上げを拡大していきたいという意思のもと自社ECサイトの立ち上げは既に完了。しかし、その後どのようにして顧客をWEBサイトに呼び寄せ、どのようなコミュニケーションで販売していくのか全く決まっていませんでした。

1-1 目標は業務用基礎化粧品の消費者への販売

    これまでは、限定された取引先へ販売しているB2B商材でしたが、エンドユーザーからの評判は非常によく、商品の品質の良さが強みだったし、そのことに自信を持っていました。そこで、インターネットを活用し、この商品を消費者に直接販売して売り上げを大きく伸ばしたいと考えていたのです。

1-2 背景と課題

    美容系店舗に業務用の基礎化粧として販売しており、かなりの売上をあげていました。美容のプロが認めた実績のある商品ではあるものの、社内にコンシューマ向けにマーケティングを行った経験はほとんどなく、何をどのように行っていけばよいのか全く分からない状態でした。

2 まず最初にやったこと - 徹底的に調査し課題を明確に

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先ず、購入者、未購入者の意識・意向、商品、競合を徹底的に分析しました。これまで業務用化粧品として販売してきましたが、エンドユーザーについての情報が全く無かった為、調査は念入りに行っています。先ずは定性調査から始まり、仮説を構築し、仮説検証の為に定量調査を行いました。これらの調査結果を元に基本戦略を策定しました。

2-1 幅広くユーザーの意見を収集する為のインターネットクチコミ情報調査

    美容系店舗に向けたプロ用商品でしたが、少量ですが一部は消費者向けに流通していました。その為、インターネット上である程度クチコミ情報を収集することが出来たのです。美容系サイトの商品レビューなどのクチコミ情報をまとめることで、ユーザーが抱いているイメージを掴むことができました。

2-2 社内ヒアリングにより、商品開発背景などを確認

    商品開発背景やこれまでの販売状況を明らかにし、USPを設定する際の参考としました。

    社内ヒアリング項目

  • 商品開発について:開発背景、拘った点、裏話など
  • ユーザーについて:ターゲット、ユーザープロフィアル、顧客からの意見・要望
  • プロモーションについて:これまで実施したプロモーション、その中で成果の上がったもの

2-3 ユーザーインタビューにより更に深い定性情報を収集

    美容サロンなどで既に商品を購入しているユーザーに対しインタビューを行い、美容全般に関する事、基礎化粧品の利用状況、当該商品への意識、満足度などを質問しました。

    ユーザーインタビュー項目

  • 美容全般に関すること:美容全般に関する意識、肌の悩みなど
  • 基礎化粧品に関する意識:どんな基礎商品を使ってきたか、ブランドチェンジについて、月額予算など
  • 当該商品について:商品の購入状況、利用状況、満足度、意見・要望など

2-4 ユーザーではない女性の意見を聞くための消費者インタビュー

    ユーザーではない女性に、一定期間サンプル商品を使ってもらい、その後インタビューを行って使用感、利用意向などを質問しました。

    消費者インタビュー項目

  • 美容全般に関すること:美容全般に関する意識、肌の悩みなど
  • 基礎化粧品に関する意識:情報入手経路、どんな基礎商品を使ってきたか、ブランドチェンジについて、月額予算など
  • 当該商品について:利用実感、満足度(効果、価格、パッケージなど)、今後の利用意向など

2-5 WEBアンケート

    インタビューで得た定性データを定量的に検証するために、WEBアンケートを実施しました。

    WEBアンケート項目

  • 基礎化粧品を購入する時の行動:情報チャネル、購入チャネル、購入頻度、ブランドチェンジ
  • 基礎化粧品を購入する時の意識:商品選択時に重視すること、デザインに関する意識

3 データ収集後にやったこと - 収集したデータを元に充分なディスカッション

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定性データ、定量データを収集した後は、ワークショップを行い、クライアントと共同でデータ分析を行いました。共同作業を行うことで、クライアントとコンサルタントとの間で課題や解決方法が共有化され、プロジェクトの一体感が出るというメリットがあります。

3-1 ワークショップ - 現状課題の明確化

    現状課題を明確化し、課題を共有化する為のワークショップを実施しました。女性の美容に対する意識は年代ごとに変化し、同時に基礎化粧品に対するニーズも購買行動も変化することが分りました。肌の悩みを感じていない若い女性にはメッセージが届きにくいことが課題だと分かりました。

  • 年代ごとに変化する美容意識
  • 基礎化粧品に対する意識も変化
  • ブランドスイッチの現状
  • ユーザー像
  • 当該商品が持たれている意識

3-2 ワークショップ - 課題解決の方向性

    現状の課題を明確にした後、その課題をどのように解決していくのか、課題解決の方向性を定めました。ターゲットを設定し、ユーザー像を明確にする為にペルソナを作成しました。また、ユーザーがロイヤルユーザーになるまでの意識行動、及びコンタクトポイントを整理し最終的にカスタマージャーニーマップとしてまとめました。更に、基礎化粧品という非常に競合の多い市場に参入する為、商品が埋もれてしまわないようにする必要がありました。その為、USPの設定は時間をかけて行いました。その際、メーカー側の都合を押し付けるUSPにならないように配慮しました。

  • ターゲットの設定(30代女性) - ペルソナの作成
  • カスタマージャーニーの設定
  • USPの設定

4 課題解決の方向性を受け具体的施策を立案

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ワークショップを実施し、クライアントとの共同作業で課題解決の方向性を定めた後、デザイナー、コピーライター、プランナーがクリエイティブ、及びプロモーションプランなど具体的施策を作りました。

4-1 キークリエイティブ作成

    調査分析結果をデザイナー、コピーライターと共有しつつ商品のUSPを表現するキークリエイティブを作成しました。

  • ビジュアル
  • メインコピー

4-2 プロモーションプランニング

    プランナーがプロモーションプランをプランニングしました。消費者には知られていない無名の商品なのでどのように認知させ、WEBサイトに流入させるかがプロモーションの課題でした。また、広告費予算をどの程度かければよいのかの目安となる利益シミュレーションを行いました。

  • プロモーションスキーム設計
  • ナーチャリング設計
  • 流入施策プランニング
  • リテンション施策プランニング
  • コンテンツ設計
  • 利益シミュレーション

5 実行フェーズで実施した事

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実施フェーズではやることがかなり盛りだくさんでした。クライアントに専属のスタッフを何人か用意して頂き、定期的な打合せを繰り返し、やるべきことを確認しながらプロジェクトを進めていきました。

特に力を入れたのは入口商品の開発と販売です。オリジナルブランドの化粧品を販売する時に、特に重要になるのが入口商品です。消費者が気軽に試すことができるサンプル商品を販売し、そこから本商品にコンバージョンさせることで、多くの新規顧客を獲得することが出来ました。

5-1 数値目標(KGI/KPI)の設定

    数値目標を設定しないとゴールが曖昧になります。ECサイトでは一般的に売上金額を目標に設定することが多いです。目標数値目標を設定することで、逆算して目標セッション数やUU数などの各指標の目標値も設定することが可能になります。

    クライアントからの要望で、全体売上と、主力商品は個別の売上を目標に設定しました。目標数字は、リピート率、リピート顧客売上金額、新規顧客売上金額、CVRなどにブレークダウンしKPIを設定していきました。

5-2 ランディングページ制作

    流入施策の入り口となるLPを作成しました。競合のLPを研究し、よい点は真似をしました。また、商品のUSPがより分りやすく伝わるようなストーリーを構築し、そのストーリーに沿って新規訪問者を説得するような形でLPを設計、制作しました。

  • 競合商品のLP調査
  • 購入までのストーリー作成
  • 情報設計(ワイヤーフレーム作成)
  • デザイン

5-3 入口商品

    初めての人でも購入しやすくなる入口商品を開発しました。サンプルを使い終わったタイミングで本商品の購入を促すハガキDM送ることにして、そのDMの制作も行いました。

  • サンプル商品
  • 入口商品包材制作
  • 同梱チラシ制作
  • 本商品の購入を促すDM制作

5-4 流入施策の実施

    利益シミュレーションの結果から、リスティング広告はコスト的に見合わないと判断し実施しませんでした。発売当初はSNSの運用、Facebook広告の出稿、アフィリエイトで流入を図りました。アフィリエイトは成果が出るまでに時間がかかりましたが、アフィリエイターが興味を持ってくれるような企画を持ちかけることで徐々に効果が出て、実績が上がっていきました。

  • SNSの運用
  • コンテンツ制作
  • Facebook広告
  • 同梱チラシ
  • 本商品の購入を促すDM
  • アフィリエイト

5-5 リテンション施策の実施

顧客がある程度増えてきてからは、新規だけでなく既存顧客へのプロモーションも行いました。顧客データを分析し、顧客セグメントを作成し、セグメントごとに異なる内容をしました。

  • 購買データの分析
  • 顧客セグメントの作成
  • ターゲットセグメントへのリテンションプラン実施

5-6 商品ページの修正

コンサルティングが始まる前に作られていた商品ページがユーザーに魅力が伝わりにくいものだったので、商品のUSPがうまく伝わるようにコピーを書き替えました。

  • USPを説明する商品コピーの開発
  • 商品ページのコピー入れ替え

5-7 定例会の実施

プロジェクト開始当初は1~2週間に1回、プロジェクトが軌道に乗ってからは月1回のペースで定例会を実施しました。実績報告資料をまとめ、他社事例を研究し、何をするべきか決めて、その進捗を管理しました。

  • KPI実績報告
  • 改善点の明確化
  • 他社事例の研究
  • 他社の良い点を真似る施策実施
  • 次回定例会までにやることを決定

6 その結果、半年後に新規顧客の売上はこれまでの20倍に!

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プロジェクトは調査フェーズ3ヶ月、実施フェーズ半年と長期に渡るものでした。専任スタッフを用意して頂くなどクライアントの全面的に協力して頂きました。スタッフの方は業務が増えてしまい大変そうでしたが、そのお蔭でシステム開発やWEBサイトのリニューアル、または、広告費を大量に投入するなど大きなコストを使うことなく新規顧客の売上が3ヶ月で5倍、6ヵ月後には20倍という大きな成果をあげることができました。

毎回の定例会議で課題の抽出と改善提案をし、クライアントのマネージャーが改善提案の実施をその場で判断し、やると決まった施策は直ぐに実行しました。行った施策の効果検証を行い、改善を重ねました。実は、ここには書いていないことも相当試しています。もちろん、うまくいかなかったこともありますが、高速でPDCAを回すことで短期間でここまでの成果が出たと思います。

7 まとめ – プロジェクトの成功要因

このプロジェクトが成功した要因として以下の3つが考えられます。これらの要素が相まって大きな成果につながったと言えるでしょう。

7-1 クライアントの強い意志により高速PDCAが可能になった

    この案件では、お客様の役員クラスのマネージャーが「ECサイトでオリジナルブランドの商品を売る」という強い意思を持ちながら陣頭指揮を取りました。社内で反対する抵抗勢力も無く、専任スタッフの方も責任感を持って仕事に取り組んでいました。そのお蔭で、高速でPDCAを回すことができ、プロジェクトが成功したのです。

7-2 高品質でよい商品であり、明確なUSPを設定することが出来た

    これは当たり前のことですが、商品が良かったのです。いくら効率よくECサイトに集客し、入口商品を買ってもらっても商品がよくなければ本商品にコンバージョンしてもらえません。このお客様の商品は、女性の肌のことを真剣に考え、真摯な姿勢でまじめにつくった基礎化粧品でした。開発者に開発時に苦労したことなどを聞くと、入手が難しい原料を日本全国手を尽くして探しており、消費者が買いたくなるようなストーリー作りによいネタがたくさんありました。このような特徴的な商品であった為、明確なUSPを作ることは比較的容易でした。

7-3 必要な調査を行い、その調査結果をクリエイターと共有することで戦略とクリエイティブが一致した

    理解のある、協力的なクライアントであった為、必要だと思える調査は全て行うことができました。この案件のようにマーケティング戦略を決める際には、我々は定量情報よりもインタビューなどで得られる定性情報を重視しますが、ユーザーや、サンプルを使用した未使用者にも話を聞くことが出来て、その結果、多くの事が分りました。これらの調査結果をデザイナーやコピーライターと共有し、戦略とクリエイティブを一致させることができ、消費者に分かりやすいコミュニケーションが可能となりました。